サンプル2 

「老化は発達と言えるか」


これは「老人問題」であると同時に一般的な「人間論」にも敷衍していくテーマです。生涯発達心理学の立場から書かれた一冊の本を参考に、からそこでなされている提起をふまえて、これからの「老い」の本質や「人間はなぜ老いていかなければならないのか。」という、人類が始まって以来心の底に深く長く抱いてきたテーマに迫っていきます。人によってこのテーマに対する切り口も違ってくるし、また、年代によってもかなりそのアプローチや内容も異なってくるのではないかと思います。「発達」の意味と「老化」の意味を重ね合わせながら、自分の考えをしっかりもって述べていくことが大切ですね。書き手の人生観や家庭環境までわかってしまうという、読み手にとってもまことにおもしろいテーマですね。


書き方の手順

  1. 「結論」を考える・・・・・・・私はこのテーマのねらい「老化はやっぱり発達である」という期待されている結論に持っていきます。
  2. その「根拠」=「本論」を考える・・・・・・・「発達している」という結論を傍証するために一冊の本を紹介し、その論理攻勢に従ってその内容を援用したり、批判したりしながらくねくねと自説の正当性を証明していきます。
  3. 「序論」は、きわめてまともにいきます。このような誰にとっても可能性があり、かつ、同時に誰も確実に体験するようなテーマは素直な論によってじっくりと、それこそ「くねくね」と説得していくことと、まともなわかりやすい実例と自分の実感をその背景ににじませていくことが肝要ですね。奇をてらうことは避けた方がよい。 しかし、通り一遍の論ばかりでは退屈するし、概論ばかりでは説得力がない。自分の中の本質的な「老い」に気づくきっかけなどキラリの光っていれば一番いいのですが。

字数の計算

  1. 序論は20%・・・・・800字の場合は160字
  2. 本論に60%・・・・・800字の場合は480字
  3. 結論は20%・・・・・800字の場合は160字

これを前提・原則にして、骨子を作る。

骨子作り

    1. 人間にとって「老い」はどのような意味を持っているか。
    2. 人間にとって「発達」とはどのような意味を持っているのか。
    3. 「発達」の内容を特に老人に対応する概念としての、また、人間全般に対応する「知能」の意味と関係づけながら子細に検討したものをまとめておく。それを論理として組み立てて、「発達」しつづけるのが人間であると、結論付けるように持っていく。
    1. 「老人」「発達」の定義・・・・・・・「生涯発達心理学」の立場からの定義を検討する。
    2. 「衰える」部分を確認する。
    3. 「発達」を知能の関係で本質的なとらえ方の方法を検討する。
    4. このような内容を明確に問題点として提起しておく。
    1. 「老い」の中身は序論と本論で検証している。
    2. 「発達」の概念も本論でチェックしている。
    3. これらをふまえて、人間は死ぬまで発達することを結論づける。

下書きから清書へ(1200字の場合)
(序論=200字 本論=800字 結論=200字)


「老化は発達といえるか」

 ソクラテスに教えてもらうまでもなく、いかなる人間もいつかは老化を迎え、そして、最期を迎える。
 しかし、その後半に訪れてくる「老い」とその最期にやって来る「死」をどのように捉えれば誰しもが平和に人生を締めくくることができるか、という意識を持って「老化」と「発達」の意味を考えていくことは老人ならずとも誠に有益な論題といえる。「生涯発達心理学」の立場からの著作があるので、(注1)それを参考にこのテーマを考えていきたい。
 老化現象というのは、運動能力の減少、記憶能力・判断能力の低下、さらには、精神的な障害、などである。これらの事実は覆い隠しようもない事実である。
 この度老化そのものの中に「発達」が存在する、という説が提示され、発達の観念は大きく羽ばたこうとしている。場合によると、老人に大いに自信を持たせてくれることになるかもしれない。 今までの「発達」とは「知能」の発達・上昇だとする中身は怪しい。一般の知能テストは、瞬間の判断力だけを問うことに力点が置かれているが、老人にはなじまないし、また、老人の持っている知能は、そのような形式の知能テストでは計れないものである。何においても熟練という領域においては旧来の知能テストのあり方がなじまないのは明らかである。老人特有の世の中の生活上のノウハウや蓄積したキャリアをふまえた奥深い判断力やさらには磨きに磨いたスキルなど、どうしても知能テストにはなじまない。それらのひたすら発達し続けてきた結果としてのその質の高さと量の豊富さには若者はそばにさえも寄られない。この崇高なスキルをIQなどのように確たる数値に表すことができれば、老人も即座に敬意を持って見られるはずだから、そうなればなおいいのである。今後の課題である。ものごとの速さよりも中身を問う時代になりつつあるのも老人にとっては大歓迎である。
 しかしそうは言うものの、今までの「発達」概念は子供が大人になっていく、といった明るい「夢」が語られたのに対して、今度は「死」に対する準備としての老化現象の受け入れである。体力の衰え・病いと知恵の伝承の問題こそ老人問題の根底にあるテーマだ。
 だが、「死」は決してマイナスのイメージではない。どんな人間も死ぬ。それは自らの蓄積した人生のノウハウのすべてを次の世代に伝えていくためである。そのために死ぬ瞬間がその人の一番最高レベルの知恵を有している時間と言うことである。それまでは人間の知能は発達し続けなければならないのである。人は知恵を継承していかなければならない。その知恵を更に磨いていく能力を知能というのである。
 知能テストで測られる知能の内容は子供に対する概念であって、そこには人間の一生という観念はない。それは我々が知恵を十分にまた正統に継承していないからではないか。現代人が忘れていた真理を気づかせる老人の発達の問題は今後は更に人間の知能の発達とその継承の問題として深く検討することが必要だ。

(注1) 「生涯発達の心理学」高橋恵子・波多野誼余夫著   岩波新書

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